2017年3月21日火曜日

メタファシリテーション講座の意外なメリット

メタファシリテーションでは、過去の事実を思いだしてもらいやすくするために、時系列で聞くという方法があり、何か相手が問題を抱えている場合、実際にどのような状況になっているのか、そもそもそれが本当に問題なのかを明確にできる、という特典がついてきます。

以下は、実際にメタファシリテーションの講座で、自分自身が体感をした内容です。


実習のお題は「私が治したい癖」でした。

私の治したい癖は「車の中でお菓子を食べる癖」。
実習を通して、過去をさかのぼっても、何年も続けてお菓子を車で爆食いしていた自分が見えてきましたが、とりわけ体調を崩したり、体重が増えたりしたわけではなく、さらには誰かを傷つけることもありませんでした。

結果的に、それは本当に治したい癖ではなく、仕事帰りにお菓子をストレス食いする自分像が許せなかっただけだった(思い込みだった)、ということに気付かされたのでした。


和田さとみ メタファシリテーション基礎講座修了生/青年海外協力隊


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メタファシリテーション基礎講座

2017年3月14日火曜日

何のために、私は質問をしているの?




日本より一足早く、春の訪れを感じるカトマンズからこんにちは。

ネパールでの活動の一つに、村人がトレーナー(この活動では、エコレンジャーと呼んでいます)として、家庭や地域でできるゴミ処理について、他の村の人々に伝える研修があります。日々、家庭で出るゴミをどう処理するか、という問題に直面しているからでしょうか、8回にわたる厳しい(!?)エコレンジャー養成研修を修了し、アクティブに研修をしているのは村のオバチャンたち。

今回は、そんなエコレンジャーとのやりとりの失敗談をお伝えします。


エコレンジャーが研修を実施するときには、私やSOMNEED Nepalのスタッフが写真・映像記録&モニタリングに行っています。そして、研修の最後には、スタッフが、参加者たちに研修の内容についての質問をする時間をもらっています。

ここのキモは、研修を実施したエコレンジャーが、私たちと参加者のやり取りを聞いていること。もし、このやり取りを聞いていて、自分の伝えたいことがうまく伝わってなかったなーと自ら気づけば、次から改善のための工夫をしてくるはず。



このとき、研修を実施したのはラクシュミさん(仮名)。研修参加者のオバチャンたちはとても元気で、誰かひとりが話し出せば、その人の話が終わらないうちに、あっちこっちから話し出す…という具合でした。
そんなワイワイガヤガヤした研修の終盤、私は、研修内容のメモを見返して、23の質問を考え、「今だ!」とばかりにラクシュミさんのところに行きました。


私「ラクシュミさん、ちょっと時間をもらってもいいですか?」


ラクシュミさん「いいですよー」


私「もしもーし、みなさん!あ、ちょっと聞いてください!今日は研修を見せてくれてありがとうございました。みなさん、たくさんのことを議論されてましたね。で、今日の研修の内容について12つ、みなさんに質問してもいいでしょうか?時間はありますか?」


相変わらずガヤガヤしつつも、質問?何々?という感じでこちらに目を向けた参加者のオバチャンたち。さっそく研修の内容についての質問を始めました。


・・・が

ふと見ると隣にいたはずのラクシュミさんがいなくなっています。
あれ?どこに行ったん?と探すと、向こうのほうで、一仕事終えた感じでお茶を飲んでいるのが見えました。これでは全く意味がない。慌てる筆者。


私「ちょっとラクシュミさん!まだ終わってませんよ、こっちに来て!」


ラ「いやーもう、今日のオバチャンたち元気だから疲れちゃって、一休みしてたのよ」
と笑いながら戻ってくるラクシュミさん。


その後も質問を一つ二つしたのですが、口々に話し出す参加者のオバチャンと、すでに一仕事終えた感のラクシュミさん…と、見事に話を聞いてもらう空気づくりに失敗してしまったわけです。

最大の反省点は、ラクシュミさんが聞く準備をしていないのに、参加者とのやり取りを始めてしまったところ。研修を見ていて、トレーナーも参加者も集中しづらい雰囲気だな、と感じていたので、どう対策をとるかを考えておくべきでした。

私が参加者にどう質問するかばかりに気をとられていて、さらに言えば、「ラクシュミさんは参加者の回答が気になるだろうから横で話を聞いてくれる」とばかり思い込んでいたので、肝心の彼女の様子には気を向けていなかったのです。

今回のケースでは、たまたまですが、ラクシュミさんは英語が堪能なので、彼女に回答をネパール語から英語に通訳してもらうといった工夫が有効だったかもしれません。
(もちろん、私の質問内容がまずく、彼女の興味をひかなかったということもあったかもしれませんが、ここでは割愛します。)
質問を考えていると、どうしても全体の流れや、状況を客観的に見て軌道修正をするのが難しいですよね。でも、「何のためにやっているのか」を常に頭に置いておかないと、この失敗談のように見事に玉砕してしまう可能性大です。この、次の一歩をクリアするためにも、誰かと対話するときには、質問をすることだけに頭を100%使うのではなく、自分に余裕を持つことを心掛けていきたいと思います。
(拙文ですが、以前、「余裕」をテーマに和田さん観察日記(のようなもの)を書いています。もし、気になる方がいらっしゃれば、過去記事をご覧くださいませ。)



(ネパールオフィス   田中十紀恵



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2017年3月7日火曜日

メタ・ファシリテーションの「メタ」とは?




私が、和田さんの魔法のような質問術に打ちのめされ、やがて自分もそれを習得しようと練習を始めたのは15年ほど前でした。以来、最も手軽な練習相手は、子どもたち、特に息子でした。現在大学3年生の彼は、事実質問を浴びせられているうちに、いつしか彼自身もそのやり方を身に付けてきました。特に「途上国の人々との話し方」が出てからは、その仕組みや技法についての理解を深めたらしく…私の対話術がネタバレになったわけです…それを参考に、彼も友人相手に事実質問を意識的に使うようになりました。彼によれば、「一番最初にそれをしたのはいつですか?それを意識し始めたのはいつ頃ですか?」と「一番最近それが起こったのはいつですか?」の2つの「いつ」パターンの質問が自然に出るようになったとのこと。


最近の例です。大学の友人A君と、帰りの電車でたまたまいっしょになりました。A君は、ちょうど就活を始めたばかりなので、自然その話題になりました。


I(一平)「就活、始めたんやてな?」

A「うん、でも今一つ調子が出ないんや」

I「お前みたいに優秀な奴がか?」…お世辞ではなく、本当にすごい奴とのこと…

A「面接がなんかぎこちなくて」

(中略)

I「で、お前自分のアピールポイント、どこと言ってるんや?」

A「柔軟性が高いことと、人のために働くのが好きなとこ」

I(驚いて)「へー、お前そういう風に自分のこと捉えてたんや。そしたら、最近、自分は柔軟性が高いと思ったのは、どんな時や?」

A「部活で、無理難題をふっかけられても、何とか対処したことかな。お前も知ってるあれや」

I「もうひとつの点は?」

A「同じ時のこと。役に立ててうれしかったんや」

I「じゃ、他には?」

A「う~ん、そういえばあんまり思いつかんな…」

I「お前、昨日から今日にかけて何してた。順番に言ってみい」

A「昨日は、面接2件行って、そのあと面白そうな講演があったんで梅田に聞きに行って、家に帰ろうと電車乗ったら、先輩から誘いの電話が入ったんで、電車下りて途中から引き返して、梅田で結局朝までカラオケして、家帰って、ジム行って汗流して、それから授業に出て、図書館で調べものして、夕方、見たい映画があったんでそれ見て、で、帰りの電車乗ったらたまたまお前に会ったんや。家帰って着替えたら、また出かけるけど」

I「お前のその行動力と体力、人間ワザやないで、俺に言わしたら」

A「(しばらく考えてから)そうか、そっちが俺のアピールポイントかもな。なんかすっきりしたわ」


実際、彼の行動力、フットワークの軽さ、決断の早さは、友人の間でも驚嘆と羨望の的でした。ところが、彼はそれに気づかずに、見当違いな長所をアピールしていたわけですから、面接がしっくりこないのは当たり前です。それが功を奏したのかどうかは別として、A君、その後の就活は快調とのことです。


ことほど左様に、自分のことを正しく認識するのは容易でありません。この自分自身を捉える能力を指して、心理学用語で、「メタ認知能力」と呼びます。メタ・ファシリテーションのメタは、そこから私が付けた呼び名です。そして、この正しい自己認知を手助けするのが、メタ・ファシリテーションの本領なのです。


メタ認知の出発点は、自分で自分のことを正しく知るのは実に難しいことだ、という認識にあり、この自覚に立って謙虚に着実に他者と対話するからこそ、他者の認知のゆがみを正すこともできるのです。


中田豊一 ムラのミライ 代表理事)

2017年2月28日火曜日

1月の暖かい風とメタファシリテーション②


先週からの続きです~
3日目、フィールドワークで集めた事実「インタビューした人は誰か」「トピックは何か」を全員が発表した後、和田がコメントしました。

「残念ながら、昨日の皆さんのインタビューは、相手の言ったことをそのまま事実と捉えていました。すなわち相手の『考え』と『事実』を混同しているのです。例えば『水が十分でない』『収入が十分でない』という村の人の言葉です。あなたたちの役割は村の人たちに『十分だ・十分でないとは実際どういうことなのか』を気づいてもらうことです。それが出来ず、村人の言う『十分でない』を事実と混同し、その十分でないモノやサービスを村人に与えるだけなら、村に行く必要は全くありません。」



最終日朝から和田節が炸裂しています。「村に行く必要は全くない」という言葉がグサッと胸に突き刺さった参加者はどれだけいたでしょうか。

貧しい村人に何かを『与える』ことが当然になってしまっている援助関係者には、これは素通りしてしまうコメントです[1]


今回の3日間の研修の次の講座となる基礎講座IIは、参加者が現場で今回習ったこととを実践した後の話になるのですが、さて今後カンボジアから次は基礎講座IIを学びたいというリクエストは届くでしょうか。


最後に参加者の方から頂いたコメントをご紹介します。

●とても100%分かったとは思えないが、フィールドで実践して、同僚にも伝えたいです。(カンボジア人男性)

●村の人と本当の課題を見つける時に事実質問を使ってみたいです。(カンボジア人男性)

●どうやって事実質問だけで対話を続けたら良いかフィールドで困ったけど、事実質問で相手のストーリーが垣間見えた時はすごく嬉しかったです。(日本人男性)
●事実質問がすごく難しいことが分かりました。もっと私の事実質問に対するフィードバックが得られる良かったですし、和田さんと村の人との対話も見たかったです。(日本人女性)



こんなコメントをいただくと、なんだかまたプノンペンの皆さんに会えそうな気がしてきました。
 

さてアシスタントの原ですが、和田からの突然の指示を巧みに受けたり、避けたりしながら、細心の注意を払い、神経を張り詰めてアシスタントとして研修に参加した反動で、すっかり3日間で食べ過ぎてしまいました。
最後にこの研修を全面的サポートしてくださったJNNCの世話役の皆さん、そしてJICAカンボジア事務所JICA-NGOデスクのスタッフの方に心よりお礼申し上げます。






[1] これを読まれた方で、「村に行く必要は全くありません」という和田の言葉が、魚の骨のように喉に刺さって気になって仕方ないという人は、ぜひ基礎講座(http://muranomirai.org/basictrg201605)にご参加ください。



原 康子 ムラノミライ認定メタファシリテーション講師)




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